【ブログ新規追加1160回】
『読書からはじまる』長田 弘・著(ちくま文庫)
「活字離れ」と言われるようになって数十年。
「本」を価値のないものだと言う人は、まずいないだろう。
しかし、活字離れ=本離れが当たり前のように叫ばれてきた。
わたしが思うに、基本的には本好きな人からすれば本とは、すべてのはじまりのような意義を持ち、崇高な品なんだろう。
読みたかったあの本、ずっと探し求めていた本が見つかった!、偶然書店で見つけた素敵そうな本などなど・・・本をめぐるストーリーさえもちょっとした小説のようなシチュエーションが思い浮かぶ。
一方で、基本的に本が好きではない場合の理由は様々で、本は苦手、本を読むよりスマホでの情報収集やSNSの繋がりが大事!とか、電子書籍(読書とは言えないかも)を読んでいるから・・・など。
まったく、二者両極端よね。
要するに、昨今の「活字離れ=読書離れ」という問題は、本というものについての考え方だろうと、「読書のはじまり」の著者・長田 弘氏は語る。
つまり、本というのは「本という考え方」そのものだと。
それはひとえに「考えの容器」や「自己表現の道具」にすぎないものではない。本そのものに価値があるのだ。
大切なのは、本は「著者の考え方を表すもの」で、その考え方を作り集めたものが本だと解説されている。
だから、「本を読む」ということは、その内容や考えを検索し、要約するということとは一線を画すものだと。
「本を読む」というのは、その本によって、本という一つの世界の作り方を学んでいることになるそうだ。
「本という考え方」を人々の間に育てて、言葉を残すことが「本」の持つ使命だ。
「本の文化」を支えてきたのは「ここにある言葉を、ここにいない人に手渡せる」という先々を見据えて行く行動にほかならない。
『読書からはじまる』では、「読まない本に豊かさがある」や「たくさん読む」が正解ではないことや、「一生忘れない」とかは嘘?!とか、本という極めて個人的な友達との関係をどうやって紡ぐのか?など、あらゆる視点から本との暮らし方を唱える素敵な一書だ。
~本はあなたを孤独にしない。読書が苦手、活字に疲れた・・・そんな本音にあたたかに寄りそう「人間」を楽しむ至高の読書エッセイである~
もくじ
• 本はもうひとりの友人
• 読書のための椅子
• 言葉を結ぶもの
• 子どもの本のちから
• 共通の大切な記憶
• 今、求められること
• 読書する生き物
• 失いたくない言葉
★★★
今回、『読書からはじまる』を勧めてくれたのは夫だ。「これ、いいよ」と。
夫は、この詩人の読書エッセイから、読書のための椅子を購入した。(読書のための椅子)
わたしは普段、出版社で書店営業を担っている。ジャンルは児童書・学参・知育玩具など。
『読書からはじまる』を読んで、子どものための「本」の考え方や在り方を学ぶことができた。(子どもの本のちから)
そこに書かれていたのは「子どもの本というのは、子どものための本ではなく、大人になってゆくために必要な本のこと」
この言葉を本の仕事を続けて行く間は、抱きしめて行こうと決めた。
いつものブックレビューとは違う視点で書いてみた。
それでは、また!
こぼれ話
長田 弘氏の著作はすべてタイトルが素敵。
『私の好きな孤独』新潮文庫
『なつかしい時間』岩波新書
『言葉の果実』潮文庫
『世界はうつくしいひと』みすず書房
これ以外にも、読書エッセイはた~くさん!
少しだけ、文章がくどいところもあるけど、言葉の素敵さには適わない。
よろしかったら、お手に取ってみてくだされ。
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『Life Tour 21st』2016年3月1日記事
http://lifetour.blog.jp/archives/1052718462.html「時の人に会いに行く」
『みいこStyle』2020年3月1日記事
http://miikostyle.blog.jp/archives/23749415.html「弥生・三月は生まれ変わる月」
『SunTAMA style』2021年3月1日記事
」
『SunTAMA Style』2022年3月1日記事
「ひたひたと 時は移りぬ 春時雨」 清流子
まだまだ冷え冷えとして煙るような雨ですが、梅や桃の花の芽吹きを促し潤しています。移り行く杏の色には、しっとりとした明るい響きさえ感じます。春はやっぱり何となくウキウキする。読書椅子が待ってるからね。
春時雨上がった!( ´艸`)