【ブログ新規追加177回】
11月3日、1年ぶりにコンサートホールでの演奏会を鑑賞した。
舞台の様子が今までとはまったくといっていいほど違う。それは、演奏者の譜面台数の多さだ。今まででは、たいがい二人で一本の譜面台を使う。
それには、理由があって、二人で片方の演奏者が譜面をめくる役目があるからだ。
しかし、今回は各自一本の譜面台を持ち、それぞれが約Ⅰm 離れての演奏。果たして音のまとまりはどうなるのだろう?
お互いの呼吸や間合いなど、距離についての試行錯誤が見て取れる配置だった。
結果オーライ。
楽団員がより互いを意識し、オーケストラという演奏形態を存分に楽しんでいたことが音からも、ステージからも溢れていた。
● 指揮者は時間を彫刻する ~指揮者;佐渡 裕氏「棒を振る人生」より
クラシック音楽は芸術と呼ばれる。
確かに素晴らしい作品はあり、神々しい演奏はある。
しかし音楽だからといって、それがすなわち芸術だとは限らない。
例えばイチローがとても難しいボールを高度な技術で打ち返したとき、人はそれを「芸術的なバッティング」と呼ぶ。
普通の人間にはできない技をとても美しい流れで見せた瞬間、それは「芸術」と呼ばれる。
しかし、僕は自分を芸術家だと思ったことはない。
それは周りが与えてくれる称号のようなものであり、僕自身は自分のことを 「音楽を扱う職人」 だと思っている。
楽譜という設計図をもとに、なかなか思いどうりにはならないヴァイオリンやフルートの専門家たちを動かして、地道に音を組み立てていく。
その作業はむしろ現場監督の仕事に近い。
佐渡 裕
わたしは、もうずいぶんと長い間、楽器を演奏することから離れている。しかし、佐渡氏の「棒を振る人生」を再読して、考えが一変したのだ。
そうか。
芸術というよりは、職人なんだと。それなら、大曲が一曲きっちり弾けなくとも、誰に聞かせなくともいいのだと解釈した。
なまじ、プロで演奏してきた・・・という自負がかえって、音楽への高い壁となっていたんだと気づく。
これからは、興味のある作曲家の解析したい曲を分析していこう。これをライフワークにしたくなった。(実は得意分野)
分析をじっくりやって、作曲家の曲の構成や思いを知り、独断で演奏を続ける。
もはや自由研究の域だ。これで、演奏家の端くれの活動になるね。
とても嬉しい。
早速、曲の分析からはじめよう。わくわくの愉しみがひとつ増えた。
● オーケストラを5倍楽しむ方法
以前は週末電車に乗ると、楽器を抱えた人をよく目にしたものだ。
もしかしたらその多くは、アマチュア・オーケストラの団員だったのかもしれない。
現在、公共施設の充実に伴い日本には市民や学生のアマオケが多くできており、東京地域だけで約400団体、全国では1000団体を超えているそうだ。
昔はチケットを購入し、都内の有名ホールで聴く演奏会ばかりだったが、ここ10年ぐらいの間にアマチュア・オーケストラに所属する人が増えて、プロ顔負けの演奏会が多数、各地域のホールで開催されている。
しかも、そのほとんどが無料である。
私も今では、有料、無料にかかわらず、聞きたいものがあれば行ける範囲で行くようにしている。
プロとアマの違いは簡単に言うと、そのことで食べていけるかどうかだけである。
アマオケの団員募集を見ると楽器を習い初めて2〜3年、週末に練習参加できることなど、ハードルの比較的低い募集が多い。
このところ、演奏する機会も鑑賞する機会も格段に増え身近になった音楽を、生活の充実のために使わない手はないだろうと思うのである。
※ 昔、ブラスバンド部や軽音楽部などに所属していた人ならば、こういった楽団では常時、メンバーを募集している。
プロの指揮者、歌い手、弾き手と共に一曲を作り上げる醍醐味が得らえる。副産物としての友達や教養、音楽の知識など。
● オーケストラを5倍楽しむ~わたしの方法
ここで、私なりの「オケを5倍楽しむ方法」を書いてみよう。
1,ホールを楽しむ。
このところ建て替えなどで新しくなったホールや劇場に出かけることで
非日常の雰囲気を味わう。
2,クラシック音楽の曲自体に焦点を当てる。
好きな曲の譜面にかかれた記号を、いかにオーケストラという集団で
音にしているかという場面を堪能する。
3,楽器の美しさを楽しむ。
約、15種類の楽器を一同に目にすることができる。
4,ステージ衣装も必見。
ソロを務める女性のドレスやソワレなどを楽しむ。
5,指揮者の音楽性を読み取る。
音の組合せや仕上げ方の妙、指揮の個性、解釈や盛り上げ方を読む。
● 次にオーケストラの構成例を示しておく。
弦楽器
第一ヴァイオリン(8人)、第二ヴァイオリン(7人)、ヴィオラ(3人)、
チェロ(5人)、コントラバス(3人)
管楽器
フルート(3人)、オーボエ(3人)、クラリネット(3人)、ファゴット(2人)、
コントラファゴット(1人)、ホルン(4人)、トランペット(2人)、
チューバ(1人)、 トロンボーン(4人)
打楽器
パーカッション(1人)
に全体のコントローラが加わる。
コンサートマスター or ミストレス(1人)、+指揮者 合計52人
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ベートーベンの交響曲第9番(合唱)などだとさらに舞台に上がる人が増える。構成をこうして改めてみると、曲全体をまとめる指揮者の力は計り知れないものと感じる。
● 最後に
さすがにアマオケといっても、指揮者は全体の指導と仕上げを兼ねるため、指揮者がアマチュアである楽団はほぼない。
常任を雇っているところや契約で数名が代わるがわる演奏会を支えるという具合だ。普段はよく知られている交響楽団に所属しているプロが多く、演奏のクオリティはある程度保たれているようだ。
私はピアノ専門なのでオケに参加の経験がなく、大集団で演奏できるということに憧れをもっている。
邪道かもしれないが、この1〜2年くらい好きなチェロなどのレッスンに通い、音が整ってきたらどこか程よいアマオケに入団して、交響楽団の舞台に立ちたいなどと夢にみている。
コロナの影響で疲れていた心身を、各段にリフレッシュできる ”音楽に触れる時間” を確保してみてはいかが。
「木枯らしや ベートーベンに 舌づつみ」 清流
昨日は関東で3年ぶりの木枯しが吹いた。寒々とした時、パッションを感じる一曲は有難い。心が覚醒してポッカポッカの気分になれる。やっぱりベートーベンは天才だ。
しかし、換気とはいえ、ホールの寒さは尋常じゃないね。防寒しないと凍えてしまいそうだったもん(泣)