【ブログ更新245回】
一日は24時間。
誰にでも平等だ。しかも0円で手に入れている。これはとても不思議なことじゃないだろうか。
で、時間の概念をこんな風に以前のブログで表現した。
~時間は面白い。貯めることができない。そして誰かにわけてもあげられない~
ちまたでもてはやされてきた時間術の書籍のあれこれ。現在、コロナ禍で2回目の緊急事態宣言下。
もう、時間なんてあり余るほどできちゃった感。オンラインやテレワークが進み、移動や通勤時間がなくなって、さらに余る時間にお手上げの人も多いと聞く。
そんな時に、昔から重用されてきた時間術の良書を2冊目に選んだ。
小説家の書いた時間術の本をサクっと紹介してみる。
自分の時間 (単行本) アーノルド・ベネット・著(三笠書房)
幾何学模様と深い青のカバーが美しい本。今回2回目を読んで、早速選書した。
【本書の概要】
本書は、20世紀初頭の英国で発表されるや大いに愛読され、その後、100年以上も世界で読み継がれている時間術の古典的名著だ。
1日は誰にとっても 24時間しかないという、当たり前だが忘れてしまいがちな事実に着目し、通常の仕事以外の時間をいかに活用して人生を充実させるかについて多くのヒントを示している。
通勤時間の過ごし方
1週間をどのように使うか、
内省の重要性
読書法
その内容が現代のビジネスパーソンにもそのまま通用することに驚かされる一書だ。
著者のアーノルド・ベネットは田舎町から身を立て、後にイギリスが生んだ「20世紀最大の小説家」と称せられた人物。
高等教育を受けてはいないが、向上心で自分の道を切り開いた著者が、幸福や成功、勤勉さや自助独立精神の重要性といった人生の知恵まで説いているのが魅力的。
すらすらと読みやすく何度でも読み返せる、一生味わうことのできる珠玉の小編。
時間の使い方を求める方だけでなく、充実した人生を求める全ての方に対応できる良書だ。
★
この本で最も著者が着目した点を少々抜き出してみよう。
「職業としての仕事以外に何かをやりたいという欲求は、ある程度精神的に成熟した人たちにとって、共通するものなのだ」文中より
この本では、新しい時間の使い方が書かれているわけではない。
著者のベネット氏は、まず人生というものを「あれをやれたら、これをやれたらと思いつつ生きてきたのが、まさに自分の人生である」と言った。
そして先にあげた一文「職業としての仕事以外に・・・」と述べている。
知的好奇心が旺盛なのは、今も昔も変わらないものだと思い知らされた。
それは、100年前のベネット氏が、余暇の使い方や自己実現に真っ向から本気で取り組んでいたのだから。
現代とは全く違う環境であっても、本質的に求めている部分はまったくといってよいほど変わらないのだ。これだけでも驚きの連続だ。
● 楽々と時間を作り出すことなどできない
そうは言ってもねえ・・・まず、立ちはだかる時間的制約はどうするの?!っと、ダレカレとなく言われてしまうだろう。
そこで、ベネット氏はこう答える。
「実際のところ、やりたいことをやれるだけの時間を作り出すことには、楽なやり方、王道などは存在しないのだ。メッカへの道はすこぶる険しいのだ」と、読者を突き放してしまう。
さらに、畳みかけるように「24時間という限られた中で価値的に創造的な時間を作り出すためには、いかにそれ相応の犠牲を払い、たゆまず努力を続ける以外に道はないのだ!」と言い切っている。
な~んだ、それじゃあ、何にも変わらない!と言われる場合は、この本が無用の長物となるだけだ。
小手先のノウハウでない、自分固有の満足のいく時間の使い方をしようじゃないか!と、言われている。
小手先と言っているのは、仕事であれど、その他の己をひどく拘束する何かがあれど、腐らず、不満を言わずやるのだという。要するに適当、手抜きはご法度!
一見、損をして回り道をしているようだが、手抜きなく、しっかりときちんとやった仕事は大抵、時間通りかそれ以上早く終われるものだ。
そして、数々の犠牲の果てにやっと、手に入れた自分だけの時間を慈しむのだと。また、この慈しむ時間をより有効かつ価値的に過ごすのにも、細心の準備を怠らないとも。
● まとめ
本書の時間活用のヒントを書き出してみた。
「朝起きたら、あなたの財布にはまっさらな24時間が詰まっている」
「仕事以外の時間の過ごし方が、人生の明暗を分ける」
「1週間を6日として考えよ」
「習慣を変えるには、小さな一歩から始めよ」
「1週間のうち90分は自己啓発のために充てよ」
「計画に縛られすぎてはいけない」
などなど。コロナ禍であっても多忙な人、反対に時間を持て余す人であってもきっと、心に響く箇所が見つかるだろう。
本書は、時間活用術における、個人的具体例やタイムマネジメントの伝授ではない。基本に立ち返って、時間を有効に活用すること、さらには、それを長く習慣づける上で不可欠な心構えや姿勢に重点をおいた一書である。
数多くの時間術の類書とは一線を画したものであろう。優れた生き方指南書である。
最後にベネット氏が残した読者への一言を。
「人生において、幸福をつかめるかどうかは、すべて時間利用のしかたにかかっています。本書があなたをただちに時間活用の達人にすることはできませんが、少なくとも、時間というものに対する新たな眼を開かせてくれることは間違いないでしょう」
「凍蝶の 如く過ごすか メイクタイム」 清流
冬枯れの茂みに隠れじっと耐えている蝶のように生きるか、それとも春にもう一度羽ばたけるかは、今という時間を自分なりにどう組み立てるかにかかっていますね。