【ブログ新規追加1017回】
⦿ あらすじ
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』の著者プレイディみかこ氏が14歳の少女の「世界」を描く。
心揺さぶる長編小説だ。
寒い冬の朝、14歳のミアは、短くなった制服のスカートを穿き、図書館の前に立っていた。
そこで出合ったのは、カネコフミコの自伝。フミコは「別の世界」を見ることができる稀有な人だったという。
※ 金子文子とは→https://ja.wikipedia.org/wiki/
本を夢中で読み進めるうち、ミアは同級生の誰よりもフミコが近くに感じられて――。
★
ポプラ社から出ているせいで、児童書だと思い込んでいた。
ただ、年齢層は明らかに中学生~高校生(13歳~18歳)を狙った書籍だ。
この年代を業界では「YA」と呼ぶ。
「YA」とは、ヤングアダルトの略で、大人の小説を読む前のひとときに、手に取って欲しい書籍類だ。
※YA出版について→ YA出版会は中学生や高校生が読書をするための環境を整え、YA向けの本の出版を活発にしていくことを目的に発足した出版社の集まり。 1979年にスタートしたYA出版会は、現在12社で活動している。(わたしの勤務する出版社も連なっている)
時おり、書店頭で「YA祭り」とかイベントが開催されているから、みかけたらぜひ、覗いて欲しいコーナーだ。
『両手にトカレフ』は、まさに、危うい思春期に世の中の影を知る・・・みたいなストーリーなのよ。
アル中で薬中の母に育てられている主人公「ミア」14歳。イギリスの中学生だ。
満足に食事を食べていないことや、成長期で制服がどんどん小さくなってしまうが買えないことや、風呂に入れないために人の集まる場所に行けなくなっていることや、弟をこんな暮らしで不憫に思うことなどが、冒頭から延々と書かれている。
一方で「カネコフミコ」という大正~明治時代を行き抜いた女性(アナキニスト・ニヒリスト)の半生を、ホームレスのおじいさんから貰った本で知り、密かにフミコを身近に感じながらも、強く生きる希望を見出してゆく物語だ。
本書の中で、二人の女の子の壮絶な生い立ちと暮らしぶりが交互に描かれる。
やはり、日本人としては「ミア」よりも「フミコ」の描写がわかりやすい。
しかし、たった14歳で人生の辛酸をなめ尽くすような日々を淡々と描かれているし、その二人を育てている母親の壮絶過ぎる人生を読み進めるのは結構辛いかもしれない。
特に子どもが辛い思いをしている情景ばかりだと、大人の読み物としては深みが得られにくく読み応えも少ない。
親から受ける虐待や育児放棄、また最近では親の介護をする子ども(ヤングケアラー)などが問題視されている。
そういった境遇にある子どもたちがしっかりと前を向く動機になることが「YA」出版の持つ使命だろう。
やはり「YA」世代(反抗期)特有の若さと、少しの暴力感と、目いっぱいの元気さがあれば読み切れる書籍だ。
ターゲットがしっかりと絞り込まれた秀逸な書籍だ。プレイディみかこ氏に拍手を贈りたい!
「ミア」と「フミコ」の生き様を読む?読まない?
わたしは、がっつり読んだ(笑)
では、また~~♪