村上春樹ライブラリーへ行く~早稲田大学・国際文学館にて【文化・最新図書館】

【ブログ新規追加505回】

わたしの仕事は「書籍」を法人に売り込む営業職だ。都内の出版社に勤めて13年となる。

自社の書籍だけでなく、常に本に関する最新の情報を集め、ごく一部となってしまうが最新刊にはほぼ目を通す毎日だ。

で、書籍だけでなく、書店や図書館も新しく開設される!と聞けば、仕事を休んでも馳せ参じている。

新しい文化の発信地となる図書館などは絶好の情報収集場所なのだ。

今月10月1日にオープンした「村上春樹ライブラリー」も本日、さっそく拝見してきた。

(事前予約を取らなくてはならない。資料先→https://www.waseda.jp/culture/wihl/other/357 入館には事前予約が必要です)

ざっとだが写真で紹介しよう。

• 建築家 隈研吾氏がフルリノベーションを手掛けた(国際文学館)の入口。

• 村上春樹ライブラリーエントランス

「階段本棚」

エントランスを抜けると村上春樹氏所蔵の書籍(多数!)とご自身の書籍がばあ~~~と天上までデザインされた書棚に並ぶ。

まず、そのきれいさに圧倒される。

ここでは、自由に本棚から読みたい本を手に取って読める。階段に座って読んでもOK。

また、写真も一部を除いてほぼ、どこでも撮れる。

• 階段のところどころにオブジェの人形が座っている。わたしは「騎士団長」かと思っちゃた(笑)

• 村上春樹ライブラリーのコンセプト。

• 「ギャラリーラウンジ」

村上春樹氏の著作だけの展示ルームにて。担当の女性が「お二人の写真撮りますよ!」と言ってもらったんで、せっかくだから村上氏自らが書いたイラスト「羊をめぐる冒険」の「羊男」を挟んでというか、3人?で(笑)撮ってもらう。

「はい!チーズ」じゃなくて、「はい!は・る・き」で行きま~す!と、笑かせてくれた。

「オーディオルーム」にて。

村上春樹氏は大のJBLマニアだ。2本の大型JBLスピーカーで氏の所蔵品のモダンジャス(LP)を聴かせてもらえる。

• 文学と建築の関係とは?

この建物のフルリノベーションを手掛けた「隈研吾氏」が雑誌BRUTUSへ寄稿されていた記事の一説を書いてみよう。

「まったく何にもないところから「村上春樹」を建物で表現するなんて絶対に無理だと思った。国際文学館という丁度いい少し小さめな建物を再生すると聞いた時、ホッと胸をなでおろしたんだ」と。

• このスペースでは、隈研吾氏が作った建築模型、ラフ画、プレゼン資料、普段読んでいる本などが展示されている。

• 貴重な建築模型

• これまた貴重なラフ画

• 最後は「村上さんの書斎」

ある日の机の上(村上氏撮影のフォト)

仕事部屋の再現

使っているカップ(これ、欲しいんだけど)

と、村上春樹ワールドにどっぷり浸かれる村上春樹ライブラリーの紹介。

ぜひ、時候のよい時に予約を取ってお越しください。

早稲田の杜が待ってるから。





いいな!っと思ったら、率直に相手に伝えると人生変わる(かも)~書籍の紹介も♪【essei / 書評・文化】

【ブログ新規追加501回】

昨日まで、怒涛の仕事ウイークだった。コロナでの訪問不可が一斉に解除されて、もうどこでも訪問OKになった。

あれほど仕事が減ってしまい辛くて悩んでばかりたのが、一気にパッカーンとスッキリして気づけば超多忙な日常に戻った。

9月に掃除や家事を目いっぱいやっておいて心底良かった。当分気にせずに暮せそうなぐらい徹底的に掃除と片づけをやったからね。

今週は外仕事が多かった。

で、事務処理はすべて帰ってからで、夕方、特急でブログを書いてアップ~急いで食事の支度~夜のオンラインでの会議や集まりに参加~もう一台の仕事PCで当日の日報を書く~と、ここまで終わったらやっと夕食。だいたい21時前後。

もうね。目がショボショボ~痛みまで出て(泣)

食事や風呂を終えて寝る前にスキャナからPC経由で注文出しと、まだまだ仕事は終わっていない。

でも、充実していると感じる。

充実の根源は、意外だけれど「誰かが良いことを持ってきてくれるのを待つ」のではなく「自分から良いことを見つけたら、そこの現場に率直に伝える」これで充実しているのだ。

そして、現場を盛り上げる売り場づくりを見つけては、「すごい!」「前とはずいぶん変わっていい感じ」とか、担当者に直接伝えていたら、あることに気がついた。

それは、誰でも「変化」に気がついて、そこをいじってくれることには嬉しいし喜びを隠さない!ってことなのだ。(「髪型変えた?」と似てるね。反対にNGワードは「太った?」だから、声かけには気をつけるべし・笑)

ほぼ、「ああ~気づきました?」「結構頑張ってやったんですよお~!」とか。話も弾むってものだ。

そして、たいがいは、普段よりたくさんの注文や追加での発注をかけて下さる。フェアの相談が舞い込んで来たり!(驚)

長引く緊急事態宣言の渦中で、客先がどんどん訪問不可となったが、10月、心機一転と自らがリフレッシュした営業スタイルが打ち出せたのが最大のコロナ禍の恩恵だったのかもしれない。

前のめりで問いかけたこちらも、何だか「幸せな気分」になれるし、なにしろみんな、話したがっているんだ!と改めて「対話」の素晴らしさを痛感する一週間だった。

自分がいいと思ったことを素通りせず、一旦持ち出してみると、明らかに双方向のコミュニケーションになる。

ああ、いい一週間だった。

「いいもんはいい」って伝えただけで幸せになったという話。

                ★

今日、紹介する書籍は「登り続ける、ということ。山を登る・学校を建てる・災害とたたかう」アルピニスト / 野口 健・著(Gakken)

• 簡単レビュー

世界7大陸の最高峰(エベレスト/8848m・アコンカグア/6959m・デナリ(マッキンリー/6190m・キリマンジャロ/5895m・エルブルース/5642m・ヴィンソンマッシーフ/4892m・モンブラン/4810m)

当時最年少記録で登頂した野口健氏。

過酷な登山を続けてながら、ネパール地震からの孤児育英を始め、小学校設立、ワンガリ・マータイ女史との交流から植林を始め、国内でも富士山大清掃や東日本大震災、熊本地震の被災地支援などに取り組んで行く。

なぜ、困難に挑み続けるのか?

アルピニストとは「最も高い困難な山を登る人」のことだそうだ。

野口健氏の真骨頂である、「困難を自ら受け入れて、それを糧に生き抜く、生き様」を特に若い人たちに伝えたい!とペンをとったのだそうだ。

ゆるぎない信念のメッセージが語られた良書である。

児童書ではあるが、大人でも充分に読み応えのある編集・構成がされている。なにより、文字が大きくハッキリとしているのがとてもいい。

• もくじ

1、ぼくはアルピニスト

2、ヒマラヤの支援で感じたこと

3、熊本地震の被災地支援で感じたこと

4、ぼくは登り続ける

あとがき

コラム 1 ぼくの登ったおもな山

コラム 2 登山クイズ

コラム 3  ぼくを抱きしめてくれたマータイさん

               ★

野口健氏の出演しているYou Tube 動画(しくじり先生)で、彼のだいたいのこれまでの生き様がわかるよ。(興味のある方は上をクリック↑)

アルピニストは自分で企業を回って独自の登山活動をプレゼンし、協賛や支援を貰い高い山へ登るのがおもな仕事だ。

その地域でお世話になったシェルパ(山岳ガイド)の生活の糧となる仕事を与え、その地域が発展途上であれば、学校を作り支援の幅を広げるのが最も重要な仕事だともいえる。

山が登山が好きなだけじゃとてもできない。

きれいな山に登るためには清掃活動も重要だ。富士山がゴミだらけで世界遺産登録から外されたショッキングな話を聞き、すぐに富士山大清掃プロジェクトを立ち上げるなど。

世間からは、当時、ぬるい慈善事業だと揶揄され、批判されたりするが、どんどんきれいな富士山となり今では、その活動も評価され参加者もうなぎのぼり。

こんな仕事の一環を児童書から学んだ。

 

★2024年10月7日更新 毎日の積み上げ~「何でも一万時間の法則」で本当にやりたかったことを手にいれよう【書評・自己啓発】

【ブログ新規追加499回】

一万時間の法則とは、ある分野でスキルを磨いて一流として成功するには、最低でも「一万時間」もの練習・努力・学習が必要だという。

「一万時間」の法則を謳ったマルコム・グラッドウエルの書籍を紹介しよう。勝間和代氏の訳で大変読みやすい本となっている。

天才!成功する人々の法則』マルコム・グラッドウエル・著/勝間和代・訳(講談社)

• 簡単レビュー

本書の内容を簡単に述べると、「成功する」といった要素を個人の資質からだけでなく、育った環境や持っている文化などの側面から考察した「21世紀版の成功論」だといえよう。

数々の成功の裏側には、必ず「フレームワーク」という考え方の枠組みがある。

例えば、持つ者はさらに豊かになり、持たざる者は持っているものまで取り上げられてしまう・・・これは「マタイ効果」というフレームワークに則った考え方だ。

著者・グラッドウエルが提唱した「何でも一万時間」とは、どんな才能や技量も、一万時間の練習や勉強を続ければ、やがて本物になれる!と、説いているのだ。

さらに、本書でのもっとも注目すべき点は、訳に勝間和代氏を迎えたことであろう。

勝間和代氏は経済評論家として数々の著作を生み出し続けている。興味深いのは実生活もすべて「効率」を求めて、料理などの家事、執筆にかける時間などの時短を追及した内容の書籍がほとんど。

本書の訳だけでなく、特筆するのは勝間氏の「これでもか!」というほど古今東西の例を挙げて書き切っているところだろう。

「一万時間なら、やらないよりやったほうが絶対にいい!」と、一万時間かけて経済評論家という立ち位置を手にした勝間氏のエピソードが満載の一書となっている。

グラッドウエルの祖国アメリカでは、知的なビジネス・パーソンは必ずこの本を読んでいるそうで、同国では「子育て中の若いお父さん・お母さんにも良く読まれているそうだ。

その理由は「自分の子どもにより多くの機会=チャンスを与えたい、成長して欲しいと願う親心から」だそうだ。

• 本書の内容(一部)を紹介する

世界の一流スポーツ選手に共通する「ある幸運」とは?

ビートルズやビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズが生まれた本当の理由は?

IQ190全米一の天才が大成できなかったのはなぜ?

頻発した大韓航空機事故。最大の原因は文化の違い

アジア人の「数学的才能」は水田から生れた

                ★★

現在、わたしが利用してるSNSは Facebook とTwitterだ。

Facebookではおもに、友だちとのおしゃべりや連絡手段で利用しているが、ことTwitterではまったく別のスタイルで利用している。

それは、情報収集と一早くトレンドを知るためだ。

また、あるハイパーブロガーのサイトは毎日覗く。

そこには「今日の積み上げ」というキーワードを中心に、その日やることを毎朝、きっちり書き出すためのサイトが展開されている。

例えば、こんな感じ(1、ブログ執筆  2、銀行、歯医者へ行く 3、筋トレ 4、ラジオを収録 5、新規事業立ち上げコンサル 6,読書)など。

毎日、毎日、このブロガーさんだけでなく、多くの人がこうして、自分を律してやるべき積み上げをこのサイトに公開している。

「書いたけれどやれなかった」という日もあるだろう。しかし、書いた時点でその人は成長していると考えるのだよ。

これが、面白くて毎日必ずこのサイトは覗いている。

だって、そこには「やりたくない~!」とか「逃げたい!」というマイナスなワードはひとつもない。

特にブロガーさんの口ぐせ「1000回続けたらよい!」と、常に言っているってこと。

いつでも、常に淡々と積み上げている人達に出会える(笑)

このブロガーさんもすでに7年も積み上げているそう。(もちろん、この方、やりたい仕事を手に入れて、海外移住を果たし、いつのまにかパートナーを得て充実真っ盛りの30代)

               ★★

さて、わたしのブログも1000回を目標に「毎日更新」を続けている。もちろん「一万時間の法則」を読んで実践してきた。

今日で499回。毎日、淡々と積み上げ中だ。

一万時間の法則とは、言うなれば継続する!と決めた「覚悟の結晶」なのだ。

わたしの1000回毎日更新もたぶん達成するだろう。

そこで手にするものは「地道・着実」だけだ。

なんと平凡なものだろうか。

しかし、人としてもっとも偉大なことなのかもしれない。(たとえブログごときであっても・笑)

継続の味をしめたら、人生丸もうけ!(笑)

             

★2024年10月2日更新 週末のお楽しみを見つけた~BRUTUS 10月15日号「特集 村上春樹・上」を読む【選書・文化雑誌】

【ブログ新規追加494回】

台風一過の土曜日。

朝から家の周りの掃除や食品の買い出しでてんやわんや!

それがひと段落したら、次は9月の請求起こしと昨日の日報や注文を送る作業と、延々と地味な事務作業が続く。

まるで、登山と同じ。似たような風景の尾根を延々と歩いている時みたいだ。

わたしは、家事や事務作業中、ながらTVはつけないし観ない。理由は単純で「気が散る」からだ(笑)

地味だけど、大切な仕事や家事をゲームのように時間通りにクリアするためには気を散らすモノはなるべく避ける。

そして作業終了という頂きまで一気に駆け上がるんだ。

特に今日は、待ちに待った「特集 村上春樹 上」を手に入れてあるのだから、サクっと仕事は終わらせて、一週間頑張った自分へ、じっくりゆっくりと村上氏の特集を読ませてあげよ。

ああ、至福。

               ★

さて、今月10月は村上春樹マンスリーだ。

かの、早稲田大学構内に「村上春樹ライブラリー」が創設され10月1日オープンを迎えた。

建物は新しくするのではない。大学内の「国際文学館」のフルリノベーションだ。

開館支援者にユニクロの柳井氏を迎え、建物外装、内装のデザイン設計は隈研吾氏に委ねられた。

※ 学生・一般の入館はすべて事前予約。(わたしは10月12日に予約した)

気になる方は「早稲田大学・村上春樹ライブラリー」で検索してくださいね。

               ★

それはさておき、雑誌「BRUTUS 」のもくじを参照しよう。

村上春樹 上「読む。」編

うちの書棚から

村上春樹の私的読書案内 51 BOOK GUIDE

著作で探る村上春樹

村上春樹 × BRUTUS Part1 特集「ドイツの『いま』を誰もしらない!」

エッセイで巡る村上カルチャー地図

翻訳家として何がすごいのか?

ようこそ、村上春樹ライブラリーへ。

                 ★

もくじを見ただけで「読みたい熱」がウズウズ~(笑)

本は「1にタイトル2にもくじ」と言われる。

そこに全力を注ぐものだ・・・と、昔、ある有名作家が言ってた。

タイトルから想像させる、タイトルで惹きつける、タイトルで語る。

そして、もくじからタイトルの示す(目指す)内容への導きをするのだと。

そして、肝心かなめの文章だが、楽しんで書けていればそれでよいそうだ(大笑)

今日、紹介している BRUTUS 10月15日号「特集 村上春樹 上」はタイトルともくじの両方が、文句なく素晴らしい!

そして、グラビアのきれいなことったらない。雑誌力という言葉があるとしたら「BRUTUS」には、読者にとって忘れられない雑誌力があるということだろう。

要するにダントツなのだ(笑)

で、たったの820円。(現在、書店で発売中)

この一冊で週末はカンペキよ。

『登山ボディ』芳須 勲 ・監修/著 山と渓谷社【選書・文化】

【ブログ新規追加481回】

登山に必要なトレーニング&栄養管理。

やっておきたいリセット&メンテナンス。

一生登れる体を手に入れよう。(装丁カバー文より)

• もくじ

1、理想に登山ボディとは

2、登山ボディをつくるトレーニング

3、登山ボディをつくる山の歩き方

4、登山ボディを維持するメンテナンス

5、登山ボディのための食事

• 簡単レビュー

安全な登山に必要なトレーニングと栄養管理、やっておきたいリセットとメンテナンス。

もっと楽に登りたい!体のケアってどうやったらいい?

多くの登山初心者が抱える疑問や悩みに適切に答える登山への体づくり指南書だ。

大判で目が弱くなってきた先輩方でも手に取って読みやすく、使いやすいヤマケイの人気「登山学校」シリーズ。

必読は筋肉、骨格の説明から各部位の強化として「トレーニング」「メンテナンス」をセットにして表示していること。

登れる体をつくるための食事も必見だ。

これ一冊で、まず登れる体をつくろう!

               ★★

個人的にこの登山ボディを読み込んで改めて知ったことは、トレーニング方法でもメンテ方法でもなかった。

同じ山に繰り返し登る」というのが一番良いと。

へえ~、だから毎週、高尾山に登るという人が多いのか。なんとなく納得。

毎回登る山を変えてしまうと、自分の体の体力や登山技術の向上がわかりにくいそうだ。(わたしは、未だ毎回山を変えている・泣笑)

同じ山を登ると、前回息が切れた場所をラクラク登れた!とか、足がつるクセがなくなった!とか。確かにいいこと尽くめ!

また、こうも書かれていた。「家の裏山(標高20~50m)があれば週3回登って、2~3キロ歩くのがおススメ」だそう。

これ、週明けからやってみよう!(家から5分のひよどり山は(標高154mで駅までは2キロってところでぴったり!)

また、仕事で歩くことが多いわたしにぴったりな、リセットウォ―キングというトレーニングもある。(リセットウォ―キング→登山後2~3日は、大股でダイナミックに歩くのがよい。登山で固まった筋肉をほぐす役目となるウォ―キング

さらに、リセットトレーニングでは「体の歪みの原因を知り解決する」という箇所が気に入った。今や生活習慣になっているPCやスマホ利用で猫背が心配な人は必読だ。

一年が過ぎる頃には驚くほど、体の向上が見られると書かれていた。

登れば、自分のコンディションがわかる。

自分の体の課題もわかる。

これだから、中年になってからのトレーニングはやらない手はないよ。

何も、山になんて登らない!という人でも一家に一冊あるといい。

誰でも生涯健康な体を保ちたい!と願っているはずだ。

体のことか気がかりだったら、こんな「体づくり」をメインにした一冊をどうぞ!

持ってしまえば、即やりたくなること請け合いよ。

一生、〇〇できる体が手に入る?!(笑)

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★2024年9月18日更新 『東京発 ドラマチックハイキング』伊藤 幸明・著(株 スタジオ タック クリエイティブ )【選書・文化】

【ブログ新規追加480回】

東京ドラマチックハイキング』伊藤 幸明・著(株 スタジオ タック クリエイティブ )

すてきな本をみつけた。

まるで、女性編集者の監修?みたいなコンパクトな版型と優しい文章。可愛い季節のお花だらけの写真に目を奪われた。

著者、伊藤氏はれっきとした登山家で、登山コーチングシステム代表を務められている。

この書籍が発刊された平成22年頃、すでに国内の山1200ヵ所を登頂されている。

この書籍を読んで初めて知った「軽登山」という考え方と提案を取り上げてみる。

軽登山」とは、体力にものを言わせる登山ではなく、むしろ体力に自信のない方でも充分楽しめる登山の世界を模索し提案しているという。

さて、『東京発 ドラマチックハイキング』の簡単なレビューをしよう。

東京都心から行く16の山と高原・・・地図でロケーションを表示。全山が関東近郊にあり、日帰りから一泊の範囲で楽しめる。著者が「ぜひ、初心者に登って欲しい推し山」なのだそうだ。

16の山と高原(カッコ数字は標高)→高尾山(599)・筑波山(877)・赤岳(2899)・赤城山(1928)・天城山(1405)・岩山(328)・岩殿山(634)・大蔵高丸(1781)・御岳山/秩父御嶽山(1081)・尾瀬(1400)・雲取山(2017)・高山(1668)・大菩薩嶺(2057)・谷川岳(1977)・天狗山(1882)・水沢山1194)

この本の見方

1、その山の象徴的なワンカット(フォト)

2、現場で出会える景色 ① 眼前に迫る景色(フォト)

3、現場で出会える景色 ② 登山をイメージしやすいコース(フォト)

4、各山で出会える植物やコースの状況

5、アプローチ、コース&マップ情報

6、著者のコラム

登山家でベテラン山ガイドならではの情報量の多さと、本の可愛らしい外見のギャップが面白い。

また、「激混む時期を上手にずらして登るおすすめの月」や「初心者でも気後れせず楽しめる登山アプローチの方法」など細かく記されている。

「軽登山」という新しい発想の山のぼりなら長く続けられる

さて、冒頭に書き込んだ「軽登山」の説明を、書籍の編集者の文中から抜粋してみよう。

~登山には、本格的なものまでを含めて様々なカテゴリーがあります。著者の伊藤さんは、この本で紹介した山をすべてスニーカーで楽しむ「軽登山派」です。

伊藤さんが推奨する「軽登山=ハイキング」では、「道のついた登山道から外れない」ことをコンセプトとしています。

そのため、この本で紹介するルートはすべて登山道(ハイキングコース)です。

紹介する山には、一部本格的な山も含まれており、安全に楽しむためには体力や経験が必要です。

しかし、季節やコースを選び、しっかりとした計画を立てれば、多くの方には実現可能だというのが伊藤さんの主張であります。

ちょっとしたハイキングを入口に、登った山のコレクションを増やしたり、経験を積んで本格登山に挑戦したりといった、様々な楽しみ方が広がります~文中より抜粋。

              ★★

この文章で分かった「軽登山」というコンセプトだが、スニーカーで行けて、登山道がちゃんとある山を、計画的に登ろう!という極、単純な話みたいだ。

しかしこの中には、大変重要な着目点がある。

「登山道を外れない」というのは、よく動画(You Tube)などで見られる「岩山」や「道がない」などの無理な登山は「しないことに徹する」という話だ。

そしてもうひとつ、「ハイキングから入るのが登山」だという発想だ。伊藤氏はスニーカーで行ける山と表現された。

わたしは長年趣味で野山を歩きまわる、いわゆる頂上を目指さないスタイルのトレッキングを続けている。やはり、スニーカーでだ。

だから、行く先も丘陵や里山が多く、登山と名乗れる山へはあまり行っていない。

子どもの頃から17歳ぐらいまでは、富士山や八ヶ岳、筑波山や美ヶ原方面など数々の山に家族で登ってきた。

それも、大人になってからは、仕事や子育てなどやることに追われるうちに登山など、すっかり忘れてしまった。

この数年自分の時間が戻り、再びの登山熱が発生した感じなんだ。だから、基本的に初心者だといえる。

※ 登山レベルの簡単フローチャート(書籍より抜粋)

① 無雪期の生涯登山日数が300日を越えているか?(越えていれば次の段階へ。越えていない場合は初心者)

② 無雪期に森林限界を超える山に50回以上登っているか?(登っていれば中級者)

③ 参考コースタイムの考え方→初心者(特に中高年)は参考コースタイムの2~3割増しを目安として時間計算をしよう!

資料元→ワンダーフォーゲル編集部編『Q&A 登山の基本』山と渓谷社より

 

焦らず、毎月ひとつづつ挑戦したいわたしにはぴったりな「軽登山」だ。

月替わりの手帳には狙った日に、ひとつ⛰マークをつけるだけ。その⛰が今では、月の中心になっているのよ(笑)

著者のコラムで登場したすてきなエピソードは、都心で働くビジネスマンの話。

毎週土曜日の夜明けに始発で高尾山へ行き山頂まで登る。その間誰にも会わずひとり黙々と登頂を果たし、一週間を無事に終えられた儀式をするのだそうだ。

「軽登山」は外見的には「軽」だが、それが内なる探求につながるものなんだと高尾山とビジネスマンの話にいたく共感した。

スニーカーで挑戦する「軽登山=ハイキング」発想で、世界がまた広がった。シルバーウイークもハイキングに行ってくる予定。ああ、楽しい。

明日につながる身体づくり~トレーニングの大事さ

10代の頃なんてトレーニングなどまったく必要はなかった。

今、中年となってトレーニングの大事さに気が付いた。というかトレーニングなしでの山行はありえないとすら感じる。

で、明日はさらにすてきな本の紹介をする予定だ。

もちろん、トレーニングがらみでね(笑)







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『山なんて嫌いだった』市毛良枝・著(ヤマケイ文庫)~元祖山ガールたちに出会う週【選書・文化】

【ブログ新規追加472回】

山なんて嫌いだった』市毛良枝・著(ヤマケイ文庫)

• 簡単レビュー

芸能界一の山好きで知られている市毛良枝さん。

日本トレッキング協会の理事を務められていた頃、書かれた名書だ。(今から20年前)

40歳で友人に連れられて登った燕岳(標高2763m)が初登山だったそうだ(驚!)

この登山が女優、市毛良枝さんの人生観を大きく変える。そんな数々のドラマがこの書には淡々とつづられている。

山と出会い、心惹かれてゆく過程を素直に表現された初の書き下ろしエッセイである。

「努力・根性・汗をかくのがキライ!」という大の運動嫌いだった彼女が、山に登ることによってどんどん変化してゆくのが手に取るようにわかる。

初登山の燕岳から、南アルプス塩見岳、八甲田山、安達太良山、八ヶ岳、双六岳、槍ヶ岳、九重山、天城山、キリマンジャロまで、ほぼ10年間の山旅の全貌はもちろんのこと、『山と渓谷』取材の裏話や登山家(故・田部井淳子さんら多数)との交流、今ならSDGsで取り上げられるであろう山岳エコロジー問題、そして、ご自身の内面をつぶさに描き切った渾身の一書だ。

山でみつけたものは、自然の素晴らしさと本当の自分だった」文中より抜粋。

なぜ山に登るのか?山を知りたい人には必見の一書。

                ★

わたしの憧れ・元祖山ガールに会いにゆく

今週、満80歳を迎えた叔母に会いに行った。

平日の午前10時。叔母は家の裏で畑仕事中だった。

実に2年ぶりの再会だ。

叔母は、栗の木の下で雑草と夢中になって格闘している。声をかけたら

「まあ!〇〇子ちゃん!」と懐かしい優しい声で叫んでくれた。(昔のホームドラマの女優さん風できれいなの)

そこから、約100坪(ヘクタールにすると0.0330579・笑)ほどの畑の中を歩きながら、「どーしても話たいことがあるから上がって!」と懇願され、コロナだから「30分だけ」といいながら上がらせてもらった。

どーしても話たいこととは、親戚の方々の近況などだ。それも大事な情報源かもしれないと思い興味を示しながら聞かせてもらった。

叔母はそういえば大の山好きだった。膝や腰を患う前、70歳近くまでは、登山サークルに入って仲間たちと毎週のように山に馳せ参じていた。

そして、客間TVの横にあった「市毛良枝さんの本」のことを思い出したのだ。(※市毛良枝さんは現在71歳。先の「山なんて嫌いだった」を執筆した当時は50歳前後だった)

市毛良枝さんにも深く影響を受けたとも聞いた。

当時59歳だった叔母は「何か新しく挑戦したくて大好きな自然と関われる登山を趣味にした」と聞かされていた。

80歳のプレゼントは何にも持って行かなかった。ただ、元気な姪の姿を見せるだけで充分だと思ったからだ。

今、叔母の関心事はこの2年患っている圧迫骨折を完治させる術を知ることだ。

わたしは母の圧迫骨折を真近で見て介護をしてきたからそのエピソードを話した。そりゃあ、もう真剣に聞いてくれた。

「圧迫骨折が完治したら昔の登山や山行の話を聞かせてね!」と言っておいた。

いつものように、家の畑で収穫したじゃがいもと、たまねぎをいっぱいお土産に持たせてくれた。

叔母に会った日は、もらったじゃがいもをさっそく茹でながら、次の低山ハイクで履くトレッキングシューズの手入れをした。

わたしの憧れる「元祖山ガール」は80歳を迎えた叔母だという話。

『A HISTORY OF PICTURES 絵画の歴史~洞窟壁画からiPadまで』デイヴィット・ホックニー&マーティン・ゲイフォード・著 SEIGENSNA 【選書・文化】

【ブログ新規追加467回】

芸術の秋到来。

まったく絵を描かないわたしが、知る由もない絵画を書く際の行き詰まりや表現への苦悩。

そういった画家が持つ思考や悩み、絵画への尽きぬ情熱、新進気鋭のデバイスを利用した新創作への挑戦。

こんな情報が満載の一書を紹介する。

• 書籍概要

待望の増補普及版。時代と地域を超え、写真、映画、デジタルまでを網羅した画期的な絵画書である。

現代美術界の巨匠デイヴィッド・ホックニーが、美術批評家マーティン・ゲイフォードとの対談を通して 有史以来の視覚芸術に通底する表現の本質に迫る。

デイヴィッド・ホックニーは語る。

画像(Picture)を用いることは目で見たものを説明する唯一の方法。

しかし、三次元の人物、物、場所などを、二次元の絵画に置き換えるには、どうすればよいのか。

絵筆、カメラ、コンピューター・ソフトウェア用いて描かれた「画像」は、私たちが周囲の世界、ひいては私たち自身をどのように見ているかを理解するにはための大きな手がかりとなっている。

本書は、絵画(画像)の歴史を、著名な芸術界の第一人者同士の対話によって叙述したもの。

鋭い洞察を備え、自由な思考を促し、現実を表現する様々な方法に関する私たちの理解を深めるのに大いに役立つだろう。

• もくじ


序 画像、美術、そして歴史
1 画像と現実
2 徴をつける
3 影とごまかし
4 時間と空間を描く
5 ブルネレスキの鏡とアルベルティの窓
6 鏡と映像
7 ルネサンス:自然主義と理想主義
8 紙、絵具、複製される画像
9 舞台を描く、絵画を上演する
10 カラヴァッジョとカメラのような目付きの男たち
11 フェルメールとレンブラント:手、レンズ、そして心
12 「理性の時代」の真実と美
13 1839年以前と以後のカメラ
14 写真、真実、そして絵画
15 写真を使う絵画、使わない絵画
16 スナップショットと動く映像
17 映画とスチル写真
18 終わりのない画像の歴史

               ★

全頁366だが、装丁、中の絵画、作品のテキストが網羅されていて、二人のクリエイターの対談で一切が進められている、とても読みやすく楽しい本だった。

ただ3850円(税込み)と。

少し高価だが絵を描く人だったら一冊手元の持たれると良いと感じた。

特に「iPadで絵を描く」という現代のデバイスを瞬時に取り入れて素描した絵などとても興味深い。

わたしごとだが、チェコ人の友人(40代女性)の画家が、7年前だったかな、「iPadで描いた家の周りの自然」を表現した作品を集めた個展を有楽町で開いた。

当日行けないと打診すると、近所まで来てくれて、iPad の中の素描を見せてくれた。

緑の美しさや川の揺らぎなど、いつも身近にある風景が iPad で描かれたことで活き活きと現代風に表現できるのだな~っと、新鮮な気分にさせられたんだ。

今回、紹介する「絵画の歴史」では、おもに「画像」の話から二人の対談がはじまる。

画像の歴史は、洞窟に始まり、現時点では、コンピューターのディスプレイ上で終わると。

この先どうなるかは、誰にもわからない。

ひとつ確かなのは、「難題」がついてまわること。

三次元の世界を二次元上に表現するにはどうすればいいのだろうか?

と、こんな風に疑問で閉じられた対談&絵画集。

絵心のある方。

二人の対談を読まれて、この「難題」に取り組んでみるのも面白いかも。

わたしはできないんで(笑)

よろしかったら、ぜひ!


『運命の11着を選べると女の人生は動き出す』MALIKA・著 サンマーク出版 【選書・ファッション】

【ブログ新規追加460回】

持ってはいるのに、着る服がないー

それは、次のステージへの扉に立っている証。

服と人生は、密接につながっているから。

服を変えるとき、最高の人生が動き出す。

さぁ、心の準備はいいですか?(本書奥付より)

運命の11着を選べると女の人生は動きだす』MALIKA・著 (サンマーク出版)

• 簡単レビュー

あなたが選んでいる「好きな服」が一番「似合う服」とは限らない。本書は、本当に似合う服を知りたくなった大人の女性のために書かれた一書だ。

持っているのに、着る服がない・・・そうため息をついたことは誰にでもあるだろう。

本当に似合う服って?ちゃんと知りたいし、似合う服を着たい。

そう感じたら、この書籍では新しいステージへの切り替え時期に遭遇しているのだそうだ。

なぜなら、服と人生ってとても密接につながってるからだと著者はいう。

しかも、どんな服を選ぶかで、どんな未来がやってくるかが決まる。「それって本当?」と、思ったあなたにこそ読んで欲しい一書なのだ。

著者のMALIKA氏は、東京銀座を拠点にして、本当に似合う服をアドバイスする「服選びの達人=ファッションアドバイザー」だ。

その服選びは、「骨格診断」でその人の骨格タイプを見究めて、似合う服を提案するという。

アドバイスを受けた数々の女性から「彼氏ができました!」とか「仕事で認められました!」など、似合う服をまとった女性からの成功体験が続々と上がってきてるのだ。

本書では、MALIKA氏の骨格診断をはじめとするテキストに沿ったMALIKAメソッドが網羅されている。

自分の骨格を知るだけでも充分に価値のある一書だ。

そして、それぞれの骨格にあう「運命の11着」を紹介していく。11着を効率よよく着まわすコーディネートも多数あり読み物としても実用的。

さあ、もうすぐおしゃれの季節「秋」

人生を変える服選び、ぜひ、あなたも体験してみて!

• もくじ

似合う服とは、その人がもっともセクシーに見える服

小柄さんにロングスカートはNGはウソ。思い込みが似合う服を遠ざける

センスがいい人でも、一番似合う服を着ているとは限らない

筋肉のつきやすいメリハリボディのストレートタイプ

厚みがなく華奢な印象のウエーブタイプ

骨太な印象のナチュラルタイプ

ストレートさんの運命の11着

ウエーブさんの運命の11着

ナチュラルさんの運命の11着

一番似合う服で私らしさを楽しむ10のコーディネート

一番似合う服だけで理想のクローゼットをつくる7つのルール

秋を迎える準備をはじめた~今、本当に必要な服だけでクローゼットを作った話

もうすぐ秋到来。

わたしは、この本をザっと読んで、自分の骨格もだいたい分かったけれど、もっとも惹かれた部分が最終章の「理想のクローゼットをつくる」という部分だった。

今週、土・日で「もう絶対に着ない服」「傷んだ服・靴・小物」をすべて処分した。

それが、加速して家中の収納を今一度点検した。

もう使わない家具や小物。近くのショップで引き取ってもらった。もちろん衣服も。

そして、空いたスペースに今のわたしに必要な服やバッグ、靴や小物をすべて集結させた。

できあがった今のわたしに必要なクローゼットとは、ほぼ、「山・トレッキング」のための服や靴・小物だった。

おしゃれというよりは登山に適した機能を持つものばかりだ。

これまで、ウエアも普段着るTシャツと一緒にしまっていた。ダウンだって、通勤コートと一緒。

そういった同混を一切やめたら、思いのほか素敵なクローゼットになったの。

とにかく、かなり捨ててすっきりしたし、今一番やりたいことに通じるファッションだから、当然熱も籠るってわけ(笑)

で、そんな片づけをずうっとやっていたら、昔、買った「L,L,bean」のバッグパックが出てきた。上高地で使ってからずっとしまい込んでいた。

もう一度使ってみようかな・・・。で、これはお取り置きした。

生き方も好みも長く生きてくれば変わって当然だ。

もう、次のステージに移ったわたしが取った行動は「今一番必要な衣服や靴・小物を一堂に集めたクローゼット」を作ったという話。

これ、意外といいかも。

素敵な自分らしいクローゼットがあるだけで気分がいい。

全部まとめてあれば、「あれがない!」と、探し回る必要もなし。

物忘れが気になるには早いけどね(笑)

★2024年8月19日更新 『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』村上春樹・著(新潮社)【選書・文化】

【ブログ新規追加450回】

一気に読んでしまった。

これまでの村上作品と比べて、遥かにモノゴトについての説明や登場人物についての情報が多く、わたしが思う「読者を置き去りにしない」秀逸な作品と言える。

小説を読むうえで、わたしが必要としているのは、伝えたいことについての説明や情報が詳細でなくとも、ある程度提供されているのを重要視している。

これまで数えきれないほど小説を読んできたから、内容が薄く書き手の勉強不足を補うリカバリーな文章表現にはもう騙されなくなった。

村上氏のこれでもか!という「ミルフィーユのように積み重なった膨大な勉強量」と「納得の行くまでゴリゴリと手直しされたであろう推敲のこん跡」が垣間見えるエンターテインメント性の高い芳醇な作品だ。

ああ、村上春樹氏ってどこまでも読者思いだったんだと改めて気が付いた(驚き!)

で、もったいないので、小説のレビューはよそう。できることなら読んでみてほしい。

簡単なあらすじだけ書き示しておく。

騎士団長殺し』村上春樹・著

これは、36歳の男性画家(肖像画専門の画家)の話だ。結婚6年目にある日突然妻から「あなたとはもう一緒にやってはいけないから」とだけ言われた。

その日の内に画家は車で東北方面へあてもなく放浪の旅に出ていく。

2ヵ月ほど北の街を放浪したが、もう飽きてしまい画家仲間の友だちにいきさつを電話した。

友だちの提案により、友だちの父親(有名画家)が所有する小田原の別荘で暮らすことになる。

そこから、奇妙な事件やら問題に引きずり込まれていく。

キーワードは別荘の屋根裏に隠すように置いてあった、「騎士団長殺し」という名前のついた大型の絵画だった。それは有名画家が「ある問題」を明らかにするために描いた絵画らしい。

主人公画家は、このピカソ作ゲルニカを思わせる絵画の持つ秘密を暴くつもりはなかったが、どんどん不思議とも言える人物や現象に巻き込まれていく。

例えば、いわくつきの中年男性の依頼を受け肖像画を書く案件とか、なぜだか夜中に鈴の音が規則正しく鳴り響くとか、怪しい石室の存在など毎日がサスペンス極まりない状況を冷静に分析する主人公画家。

謎だらけの話がさらに謎を生む。

そんなある日、イデアが突然顕れる。

イデアとは、プラトンが生んだ哲学だ。

「見る」という動詞(idein) に由来する。元々は「見られている」ことを前提とした「姿」「形」を表す言葉である。

作品中、時おり主人公の前に姿を顕す身長60㎝のイデアは、まさに「騎士団長」の出で立ちをしていた。

イデアが顕れるようになってからは、不思議な現象にも説明がつき、いつしか現実でも非現実でもモノゴトは進んでいくし、まったく怖いものではなくなっていった。

しかもイデアは予言ができる。

この予言に従う主人公画家の行く末は・・・。

               ★

「第2部 還ろうメタファー編」では、主人公画家とイデアが遭遇する新たな局面(解決すべき問題)をどうやって乗り越えるのかが超楽しみだ。

第1部、第2部で1000ページにも及ぶ超大作。それを一気に読ませる村上氏の筆力には脱帽する。

※8月18日夕方の月

騎士団長の放つ名言に「目に見えるものが現実だ」「しっかりと目を開けて見ておればいいのだ」「判断はあとですればよい」と。

村上氏には珍しい、モノゴトの収束をさせる場面も多数あり、この作品は第3部が続編で出されるだろうと、多くのハルキストの話題となった記憶がある。

そうね。第3部が出たらぜひ、読みたい。

どうか、村上氏、煙に巻かないで・・・(笑)

※ 騎士団長のモチーフは、モーツアルト作オペラ「ドン・ジョバンニ」の名場面「地獄落ち」からだそうだ。

まず、タイトルありきの作品となった。