新型コロナウイルス感染に怯える2020年。今、自然からの警鐘をこの本で再確認している。
「自然は、沈黙した。いまはもの音一つしない。野原、森、沼地――みな黙りこくっている」「でも、敵におそわれたわけでもない。すべては、人間がみずからまねいた禍いだったのだ」文中より
2月~3月と、ひたひたと忍び寄るウイルスの恐怖を感じながら、日々外へと仕事に出ていた。仕事先のショッピングモールでは、マスクやトイレットペーパーの買いだめが怒涛のように起こり、群集心理に引きずられて、仕事の合間に行列に並んだ。
運よく100円均の30枚入りマスクを手に入れた時は、安堵する気持ちが沸き上がった。たかがマスクで?しかし、マスクがなければ営業の仕事には出られない。まず、1か月安心して働けるよう準備ができた。その後、会社から2度に渡る50枚入りのマスク配給には涙が出た。
3月24日からは、いよいよの自宅待機。4月7日の緊急事態宣言を受けて仕事のストップが決まった。長期休暇にもあたるこの不思議な期間を、今まで懸案だったブログを統合するサイトを構築し始めた。
そして、普段なかなか読めなかった名書もひも解き始めた。いつも仕事に出ている時間をそれにあてて、無駄に過ごさないように、徹底した自己管理を始めた。
沈黙の春(Silent Spring)は1962年に出版された。DDTを始めとする農薬などの化学物質の危険性を、鳥達が鳴かなくなった春という出来事を通し訴えた作品。 発売されて半年で50万部を超えた世界的な大ベストセラー。
SDGs、ESGなどの国連の取り組みや、気候変動や環境保護を訴えるグレタさん等、今では環境保護、気候変動への対処といったテーマが盛んに耳目を引いていることは間違いない。
著者レイチェル・カーソンは、この本で主にアメリカでの化学農薬の大規模な散布が、自然に破壊的影響を与えている実例数多く紹介し、警鐘を鳴らしている。
商務省、内務省での勤務で彼女自身が環境問題に関与したことから、実例は具体的な数値や、人間以外の動物、野鳥、昆虫、魚類と多岐に亘る生物への影響の具体例に裏打ちされて、大変説得力がある一書だ。
公害は高度成長路線に乗った世の中の、人的無差別テロと言い換えられるだろう。生物・植物と環境を切り離して論じてはならない。それを彼女は58年前に発信した先見性には敬意を払いたい。
改めて出所の分からないものの見極めと、成分の分からないものを口に入れないなど、情報リテラシーと判断基準の質的向上が必要なことと切実に感じた。新型コロナウイルスに対する対処への教訓ともなろう。
「沈黙の春」を久しぶりにひも解いて、アッ!と思い立ったこと。それはSNSとの付き合い方だ。SNSバーチャルの向こうには人がいる。考え方も生き方も違う無数の人たちが。
これまでわたしは、自分とは正反対の発言やヘイト、また遠巻きに人を揶揄するクセのある人はなるたけ遠ざけてきたし、おかしいと感じた投稿には、すかさずブロックをしていた。
今回、このブロックをすべて解除をした。それからいくつかのSNSで様々な整理をしてすっきりと総合ブログサイトを始められるように準備を進めたのだ。
今、まさにやらなければいけないことは、できるかぎり「純粋に」「素直に」なることだろう。そうでなければ、他人の意見や要請を受け入れられず、余計な知識や認識で目を曇らせて大事なことを見逃してしまうと感じたからだ。
時間がない!焦る気持ちをなだめながら、毎日、自分の人生の棚卸しをやり続けていた。あっという間の1か月だった。
緊急事態宣言の延長でしばらくはこの生活が続く。感染者数が圧倒的に多い東京がいつ宣言解除になるのか・・・まだまだ先は見えないが、ただ、少しずつ感染者数が減ってきてはいる。
だからこそ、希望を持ってこの豊富な時間を、今しかできないことに賢く費やそう。
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