エリザベス・ギルバート・著 神奈川夏子・訳(ディスカバートゥエンティワン)
著者本人は、読者のためではなく「自分自身のために書いた」と本書の中で強調している。本書奥付より。
著者のエリザベス・ギルバートは、アメリカの小説家。
代表作『食べて、祈って、恋をして』は、1200万部という大ベストセラーを記録した。
同作品は映画化され、ジュリア・ロバーツが主演を務めた。
著者はTEDに2回登壇している。こちらの再生回数は、なんと1600万回に上る。私自身もTEDを拝聴して、BIG MAGIC を読もうと決めた。
● BIG MAG の導入部
著者が語る BIG MAGIC とは何だろう?
それは 地球にはアイデアも棲んでいる ということにまつわる様々な奇跡のことだと理解ができる。
まず、アイデアは生命体である という観点をあらゆる角度から引き出した一書だ。
要するに簡単に言ってしまえば、あらゆるクリエイターが生み出し続ける創作物には、地球からの生きたアイデア=生命体が寄り添いもたらしたものだという観点。
(文中から)地球上には、動物や植物、バクテリア、そしてウイルスが共に棲息している。しかし、それだけではなく、地球にはアイデアも棲みついているのだ。
アイデアは固有の肉体をもたない、ただのエネルギーを持つ生命体だと考えられる。しかも、わたし達人間からは、完全に切り離された存在で、やり取りが可能なのである。
エネルギーを持つ生命体「アイデア」には切望していることがある。それは、誰かによって自分を形(作品)にしてもらうことだ。アイデアの持つ資質を誰か優秀な書き手に具現化して欲しがっているのだと言い切っている。(文中より)
ここでの誰かとは、画家・ミュージシャン・小説家などのクリエイターたちを指し述べている。
● 著者自身の体験からBIG MAGIC をひも解く
彼女は、自然科学を取り入れた小説を書く作家として生計を立てている。ある朝、突然小説のアイデアが降り注いできたのだ。
しかし、彼女はまだ早い・・・と感じ、しばらく自身の様子を見ていたのだ。すると、あっという間に別の作家がほぼ、同じ内容のアイデアをふんだんに盛り込んだ小説を出版してしまった。
このことから、2つの着目点が考えられたのだそうだ。
① まだ、時期が来ていなかったから、ジャストな人のところに作品の種は落ちて行ったのだと。この観点はもろにアイデアは生命体だという彼女の持論だ。
同時に同じ事を考える偶然もBIG MAGICの特徴のようだ。だから、アイデアを盗まれた!と騒ぐ場合もいたしかりしかもしれない。
② いいや、アイデアのしっぽを掴みそこなったのはタイミングを逃した自分だと。原理原則に忠実な彼女のごく普通の観点。さて、どっち?
その時の著者自身の気持ちを文中から拾ってみよう。
(文中から)そしてアイデアは、ある日唐突に誰かの元にやってくる。普通は、アイデアがやってきても他のことをしていて気がつかない。
もしくは、気がついても「そんなの自分の手には負えない」とお断りしてしまう。
しかし、アイデアと戯れることを決意したとき、創造は始まる。 まるで禁じられた恋のように、熱烈に。(文中より)
この文面から2つの観点が明確に表現されていた。①に対してはまだ早い~今回は見送ろうと逃す自分。②に対しては、アイデアを受け入れることを恐れずに決意すると、創造が始まる前向きな自分だと。
これではっきりわかったことは、どんな小さな発見やアイデアであっても、すぐに着手すべきだということなのだ。②が本心だ。
やって失敗するより、やらなかった後悔であれば、やって失敗のほうが100%前向きな決断なのだ。
しかも、アイデアという生命体は、誰かの手によって作品に生んでほしい!と願っているのだから、それを叶えてあげないといけない。
文中より著者の体験のまとめを書き出す。
【まとめ】
ふいにアイデアが自分のところに現れたら、これからよろしく!と握手をし、それが作品となる日まで決して喧嘩をせず、見捨てずに、自分の持てる力を最大限に発揮して互いに協力すべきだ。
※努力を怠って放っておくと、アイデアは待ちくたびれて、どこかに去ってしまうこともあるから要注意。
● クリエイティブという魔法~書評
すべての人の奥底に創造の種という贈り物は眠っている。それを目覚めさせて、大きく育てるためのキャンバスを持ち、描き出す勇気を持つ人だけが、このBIG MAGICという魔法の虜になれる。
それは、たとえば作家などのクリエイター職ばかりじゃなく、庭師や料理人など、自分自身の人生を充実させるものすべてを指すのだ。自分の人生をより、クリエイティブなものとして考えることができるかどうかで、BIG MAGIC を掴めるかどうかが決まってしまう。
手前みそだが、わたしはブログを運営してる。最近、ブログ執筆がとてもクリエイティブな作業だと感じている。それを持てたことが幸せだと実感できたのだ。小さなBIG MAGIC を経験し掴み切れたからこそ、夢中という幸せが手に入るのだとわかった。
また、どんなひとにでも発揮できる創造性だと読み取った。だから特別な能力とも、すごい学歴ともまったく違う。
それは、自分のできる事を全力でやる事と、やり切った後に見える景色をきちんと見ておかないといけないのだと。
BIG MAGICは、きちんと見ている人の元に降臨するのだ。
● 著者の願いとは
本書のメッセージは、あくまで、著者自身が作家としての教訓を交えながら自分の内面と向かい合って対話している、と言えばわかりやすい。
思い込みが多く、不安定な著者が作家として生きると決めた決心の場面は靜かながらもとても情熱的で印象深かった。
自分の人生に忠実であり続けることができるのか? 移ろいやすいクリエイティビティをつなぎとめるための考え方とは?悩みや葛藤さえも美しかった。
創造的に生きるということは、名声を得るとか、才能を使ってお金持ちになるとか、そういうことではないのだと、著者は繰り返えす。
むしろ自分の中の創造性を、社会で換金しようという目的を第一にしてしまうと、創造性は痩せおとろえてしまうとも言っている。
わたしの話だが、ブログを書くことが楽しくて毎回、何を書こうかと考えるとワクワクが止まらない。
書きあげて推敲、撮影しておいた写真を入れてのアップでウキウキは最高潮に(笑)
それでいいのだ、それがいいのだ、それを続けなさい、と著者が私の背中をポンポンと軽く叩いてくれるのだ。
さらに、 見えないけれど私の周りにアイデア、好奇心の種が満ち溢れていることも教えてくれる。
完璧なアーティストではない、私たちだからこそ共感できる、個人的かつ創造的生き方の告白。それが本書なのだ。
【もくじ】
Chapter 1 「恐れ」を乗り越え、充実した人生を送るには
Chapter 2 インスピレーションとともに生きる
Chapter 3 誰もが「やりたいことをやる自由」を持っている
Chapter 4 決してあきらめない
Chapter 5 好奇心を信じ続ける
Chapter6 ビッグマジックが起こした奇跡
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