「歩く目的」を考える旅~上高地で雪中トレッキングを体験した記事を紹介(Life Tour 21st より)【Life Tour 21より・上高地雪中トレッキング】

【ブログ新規追加442回】

旅の中心を「歩く」ことに特化した上高地での雪中トレッキング体験。

これまで一番多くの読者数となった記事を全文紹介する。

わたしの旅はできるかぎりその土地を「歩く」ことに集中してきた。韓国・台湾・香港・この3か所では、ほぼ歩きばかりで観光地を攻めた(笑)

タクシーで周るのも悪くはないが、どこか、その土地をスル―してしまうような残念な気持ちになる。

できれば路線バスで行けるところまで行き、あとは徒歩で目的地にたどり着く・・・そんな旅が好きで続けてきた。

自分の足できちんと歩いてこそ「持って帰れる思い出の詰まった旅」になるのでは?と考えている。

歩き疲れた思い出を持って帰れたら、しばらくは旅の思い出と共に日常にも新鮮さが増すものなのだ。

歩き疲れるってそんないいもんじゃない?

いいえ、とってもいいものなの(笑)

そんな旅の記事を一本紹介しよう。

※ ブログ内の写真はすべて、iPhone4Sで撮った。

山岳リゾート 上高地へ行く(2017年4月29日)

    
写真は河童橋から穂高連峰を望む一枚。

~山の仙境といわれる上高地は、徳川時代の後半に山仕事をする人たちが、夏の間だけ入山して森仕事についていた場所である。

明治10年以降、外国人登山家に刺激されて日本の登山家も徐々に増え、上高地の風景が世間にも広く知られるようになった。

しかし、昭和の初めまでは自分の足で歩いて入れる山の地の人たちだけの秘境だった。

昭和8年、島々→上高地間の車道が開通し、「秘境・上高地」が一般旅行者の前に神秘のヴェールを脱いだのだった。『上高地小史』より

 2017年 4月27日、上高地「開山祭」に行ってきた。

毎年27日と決まっている。この日に山の神に祈りを捧げ、この1年の安全・無事故を願う上高地最大のお祭りで、スイス観光協会の5~6人のアルペンホルンの演奏やヨーデルの披露があり、樽酒などが振舞われる。

年々参加者も増えており、今年は3500名ということだった。

4月中旬に、夫のCPX(心肺運動負荷試験)という検査が終わり、心臓の負荷に対する持久力などを調べてもらった。

今の心臓や血管の状況は、まだまだ運動が足りずうまく取り入れる必要があるのだという。

主治医にも相談してのトレッキング挑戦だった。

 上高地は、わたしには一見行きやすそうに思え、完全に舐め切っていたのだが、標高1600mの冬山の山開きである。

わたしは直前まで仕事をして、旅の準備などそこそこに済ませ、何とかなるさ!と捉えていた一方、夫は準備に抜かりなく、毎日の準備運動に加えアルピニスト初心者用の装備を用意していた。

わたしと言えば直前に2回、近所の都立公園(標高154m・笑)を登って、これで大丈夫!装備はバックパックとダウンがあるから平気!なんて思っていた。

散策登山には冬のブーツで、ピッケルなどはバスセンターでも売っているし・・・と。

  
  
上高地スタート地点と定めた大正池付近。今年は例年になく雪が残り大変!

午前7時に高速バスが大正池に着くと、そこで下車したのは、わたし達2人と中国人5人の観光客のみ。

どうもあとの乗客は皆終点の河童橋付近のバスセンターまで行く様子。開山式の参加者だろう。

わたし達は事前の登山&トレッキングガイドで知った、大正池から始まる遊歩道(木道)で歩いて河童橋を目指すというコースをとった。

しかし、大正池や焼岳をひとしきり鑑賞したら、次の田代湿原に向けて行こうと思った矢先、遊歩道がすべて雪道のままになっていたのだ・・・(>_<)

車道を歩くのも味気ないし危ない。あえて雪道トレッキングを選んだが、一歩、一歩、雪を踏みしめながらの道のりは、たった4,3キロでも、通常は1時間のところを2時間30分もかかった。

しかも途中で出会った人は、男女のカップル2人だけ。

人けのない湿原や林ほど怖いものはない。注意プレートにある通り、今にも熊が顔を出しそうで落ち着かない。

   
   
遊歩道を歩くのに一苦労!クマ注意標識にびくびく。

でも、お天気は予報とは違い運よく晴天で、鳥のさえずりのみが響き渡るえそブナの森林は、まだ雪解けを迎える春になったばかり。

あちらこちらに熊出没の危険プレートが立てられていたが、熊よけの鈴も持っていないので、もうビクビクしながら慎重に、池や川に落ちないように目的の河童橋を目指した。

黙々と森林を歩くこと2時間、ようやっと、田代橋が見えてきた。安堵感で普通の道に出られるのが実に嬉しい!田代湿原はまだ半分雪の凍った湿原だった。

   
田代湿原はまだまだ寒々しい。

ここからは、意気揚々と憧れの上高地帝国ホテルを目指す。

途中では春を迎えるふきのとうが群生する緑の林や、雪解けの小川にはヤマメが静かに泳いでいたりと、何もかもが澄んで美しい山の原風景である。

そうするうちに帝国ホテルの赤い屋根が見えてきた!喜び勇んで坂を駆け上る!さっきまでもう、へとへとで無口だったのにほんと現金なもの(笑)

山岳リゾート発祥の帝国ホテルロビーには、これから出発するアルピニストがたくさん!都心の帝国ホテルとは全く雰囲気が違う。

どうやら雪や熊に関する情報や立ち入り禁止区域の説明など、ツアーコンダクターがいるようだ。

そこで気が付いたのだが、どうもわたし達は一部立ち入り禁止区域を歩いてきたよう・・・(汗)

トレッキング途中、晴天の空には、時折遭難者救助だろうか、ヘリコプターの爆音が聞こえていたし。

ああ、無事でよかったなア~(笑)

   
上高地リゾートの中心帝国ホテル。

 目当ての河童橋は、開山まつりの参加者と中国の観光客がそれこそいっぱい!中国人観光客はバスセンターまでバスで、そこから約400m先の河童橋を目指す山歩きだから、山装備の人は少ない。ツアーコンダクターだってスーツを着ているし。

確かに、河童橋付近は観光整備されていて歩きやすく、お店も観光地風になっていて、河童橋と梓川と北アルプスの3つが融合した本当に美しい場所。あたりかまわず、写真を撮りたくなるのもうなずける。

   
•上高地バスターミナルデッキからのパノラマ撮影写真。

北アルプスの雄大な山々と梓川の美しさで、これから初夏~晩秋まで絶好のシーズンとなる美しい上高地。

上高地固有種の化粧柳をはじめとする、樹木・野鳥・山野草と見どころがたくさんの上高地は「神河内」ともいわれる。

穂の様に高い穂高は明神池のご神体、神域であることから、その河なかだけは「神河内」という。

今の大正池から明神池へと範囲が広まってからは「上高地」と書くようになったそうだ。

上高地へ登る途中、山里にはまだ其処かしこと桜が咲き乱れていた。

まさしく「東風凍を解く」状態である。

春の気が氷を解かすというのだ。東は春の象徴で、太陽が昇ってくる東には物事の始まる初々しさを感じたりもする。

大自然に触れて、深い呼吸とリズムを手に入れることができた今回の旅。


こうした静かな季節の繰り返しを体感するなか、否が応にも始まった新年度に期待が高まる・・・

http://lifetour.blog.jp「山岳リゾート 上高地へ行く

                               
前編:信州・松本 城下町を歩く。