『三行で撃つ 善く生きるための文章塾』近藤健太郎・著(CCCメディアハウス)【選書・ワークスタイル】

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『三行で撃つ 善く生きるための文章塾』近藤 康太郎・著(CCCメディアハウス)

簡単レビュー

「朝日新聞」名物・名文記者の技巧25発!
「あの人の文章は、ちょっといい」と言われるわたしになれば、自分が変わる。(はじめにより)

本書で身につく技術とは?例えばこんなキーワードが浮かぶだろう。
◎文章技術 ◎企画力 ◎時間・自己管理術 ◎読書術 ◎資料整理術 ◎思考法

本書の読者対象は、書くことに苦手意識を持つ人から、文章でなにかを表現したい人、プロのライターや記者までと多岐にわたる。

「読者は、あなたに興味がない(謙虚たれ)」という冷厳な現実を見つめるところからスタートし、「いい文章」とはなにかを考え、そういうものが書けるレベルを目指す。

文章術の実用書らしく、つかみ(冒頭)の三行、起承転結、常套句が害悪な理由を述べる。

一人称、文体、リズム、といった必要十分なテクニックを網羅するが、単なる方法論にはとどまらず、なぜそうするのかを、自己や他者の心のありようにフォーカスしながら考える。

文学作品から、新聞記事、詩歌、浪曲まで、豊富な例示を取り上げ、具体的に解説していく。

また、同時に、本書は「書くという営為を通じて実存について考える」思想書でもある。

読み進めるにしたがい、「私というもの」に向き合わざるを得なくなる。

言葉とはなにか? 文章とはなんのためにあるのか? なぜ書くのか? 生きるとは? 思索が深まるほどに、世界の切り取り方が変わり、自分が変わる。

わたしにしか、書けないものは、ある――
・文章は、見えなかったものを見えるようにすること
・文章は、見えていたものを見えなくすること(奥付から)

(目次)

はじめに
第1章 文章の基本
■第1発:三行で撃つ――書き出しを外すと、次はない。
■第2発:うまい文章――うまくなりたいというけれど。
■第3発:すべる文章――読みやすさはきめ細やかさ。
第2章 禁じ手を知る
■第4発:常套句・「としたもんだ表現」――親のかたきでござります。
■第5発:擬音語・擬態語・流行語――エモいも、ほっこりも、マジ、やばい。
■第6発:起承転結――転を味方につければサバイブできる。
■第7発:共感させる技術――響く文章は、説明しない。
第3章 ライターの心得
■第8発:ライターになる――誰にでもなれるが、なれないのはなぜか。
■第9発:説得する技術――メール上手は幸せな人生を送る。
■第10発:一人称・読者の設定――だれが書くか。だれに書くか。
第4章 書くための四つの道具
■第11発:ライターの道具箱――メンテナンスし、持ち歩く。
■第12発:語彙【道具箱・一段目】――増やすには逆に制限する。
■第13発:文体【道具箱・二段目】――スタイルのない人間は、みじめだ。
■第14発:企画【道具箱・三段目】――なにが、わたしにしか、書けないか。
■第15発:ナラティブ【道具箱・四段目】――有限の物語を無限化する最強の武器。
第5章 読ませるための3感
■第16発:スピード感【3感・其の一】――主語と語尾で走り出す。
■第17発:リズム感【3感・其の二】――静かな文章でも話芸から盗める。
■第18発:グルーヴ感【3感・其の三】――推敲でサウンドチェックする。
第6章 自己管理の技術
■第19発:意見や助言――人の話は、聞いて、聞くな。
■第20発:時間管理・執筆環境――いつ書くか、どこで書くか。
■第21発:書棚整理術――抜き書き帳で脳内を可視化する。
第7章 生まれたからには生きてみる
■第22発:文章、とは――良く生きる、善く生きる、好く生きる。
■第23発:言葉、とは――言葉は道具ではない。
■第24発:書く、とは――わたしは、書かなければならない。
■第25発:痕跡――わたしは書き残す。あなたが読み解く。
おわりに

              ★

2020年12月、発刊されてすぐに購入。

一度ザッと、目を通すもずう~~~~っと、棚上げしてきた。

レビューを書くにも、なんとなく気分が乗らなかった。

なぜなら、当時、コロナが全盛を迎えて、仕事先の訪問停止という前代未聞の境遇に悩まされていたからだ。

「能天気に文章のなんたるか!を読んで勉強しよう!」とか、これぽっちも思えず、棚上げされていった一書。

現在、コロナもそろそろ終焉か?一方で第9波の恐れありとも囁かれている。

新年度の激務も昨日で、ようやっと乗り切った。

爽やかな時を迎えて、ようやっと勉強してみようと思い、一昨日から読み始めている。

2021年の春、『三行で撃つ』の書評を新聞記事ではなく、某アウトドア雑誌で目にして、仕事中にも関わらす、書店で一気に立ち読みをしてしまった。

いったい、何がそれほどまでに読ませる要因だったのか?といえば、著者の近藤 康太郎氏のプロフィールが滅多にないものだったから。

新聞記者から、ある日突然思い立って、九州の諫早に百姓移住し、その後九州は日田で狩猟(マタギではない)をしつつ、わずかな食い扶持を得ながらライター生活を送っていることを知ったからだ。

早朝、1時間だけ百姓をし、あとは狩りに行く。SNSもやらないし、TVもあまり観ないそうだ。

まるで世捨て人にでもなったかのような生活。その地味極まりない移住先へ、若い記者やライター達が押し寄せるようになったというのだ。

酒を酌み交わし、語るのは「文章のアレコレ」だと。仕事中毒の記者やライターたちが塾をやって欲しいと懇願し、塾で勉強した若者の中から何人もライターとして独り立ちするメンバーが現われる。

こんな話が、文章術のテキスト間に挟まれていてなんとも読みごたえ抜群だ。

タイトルの「撃つ」とはまさしくピストルを「撃つ」ことと同意だという。

まあ、あまり語ってしまうとレビューとしてははばかられてしまうので、興味がある方はぜひ、書店やWEBで購入されてみて!

では、最後に文中の著者ひとことを載せて終わろう。

生まれたからには生きてみる。
書くとは、考えること。
書きたく、なる。わたしに〈なる〉ために。

では、また。