『老後とピアノ』稲垣えみ子・ポプラ社~50歳で退社。夫なし、子なし、冷蔵庫なし・ガス契約なしの「楽しく閉じて行く生活」を模索中に再開したピアノに向き合う日々~老いるヒント満載【選書・文化】

【ブログ新規追加1078回】

『老後とピアノ』稲垣みえ子・著(ポプラ社)

簡単レビュー

恩田陸氏、清水ミチコ氏、推薦!

実は老後の話でもピアノの話でもなく、
私たちがどう生きるかという話だったのに
びっくり。励まされます!
――恩田陸氏。

人はピアノの前に座ると、自分との対話が始まる。
稲垣さんの対話は、正直で面白いうえ、
読んでるこっちまで参加したくなる。
――清水ミチコ氏。


朝日新聞を退職し、50歳を過ぎて始めたのは、ピアノ。人生後半戦、ずっとやりたくても、できなかったことをやってみる。

他人の評価はどうでもいい。

エゴを捨て、自分を信じ、「いま」を楽しむことの幸せを、ピアノは教えてくれた。

老後を朗らかに生きていくエッセイ集。

〇 目次
1章 40年ぶりのピアノ
2章 弾きたい曲を弾いてみる
3章 動かぬ体、働かぬ脳
4章 ああ発表会
5章 老後とピアノ

コラム 大人のピアノのはじめかた
付録1 私が挑んだ曲一覧
付録2 私の好きな名盤11選

著者紹介・稲垣えみ子
1965年、愛知県生まれ。一橋大学社会学部卒。朝日新聞社で、論説委員、編集委員をつとめ、2016年に50歳で退社。以来、夫なし、子なし、冷蔵庫なし、ガス契約なしの「楽しく閉じて行く生活」を模索中。著書に『魂の退社』『寂しい生活』『人生はどこでもドア』『アフロ記者』『一人飲みで生きていく』など。『もうレシピ本はいらない』で第5回料理レシピ本大賞料理部門エッセイ賞を受賞。

             ★★★

ああ~~~、痛快、痛快!久しぶりに面白い本に出会った。

誰だって歳を取れば、身体が思うように動かないとか当たり前で、それを嘆いたりせず、新しい自分への投資のつもりで全力でピアノに向かう稲垣えみ子女氏。

以前、NHK「朝イチ!」に出演されていた。トレードマークのアフロヘアがずいぶんと白髪ヘアに変わっていた。

彼女は50歳で新聞社を早期退職し、退職金でささやかにリフォームした古いマンションで電気もガスも引いていない、文字通り「仙人」のような暮らしをされていた。当時、NHKの特番で放映され注目を受けた。

自転車を部屋に持ち込んで、サウナスーツを着込み自家発電をしつつ、小さな光で夜を過ごされていたのには驚きだったわん(笑)

お部屋の窓には一切カーテンはつけない。太陽の光は重要なエネルギーだから全部頂くとばかりに、干し野菜作りに精進。

つつましくも楽しい暮らしを実現していたのが印象的だった。(とても真似しようとか思えなかったけれど・笑)

そんな稲垣えみ子女氏が、老い方のレッスンとして選んだのが「ピアノ」だった。

しかも、ピアノは持ってはいないが、ある御厚意に触れてピアノを再開できる準備が整ってしまうんだ。

どれだけ衰えてダメになっても、今この瞬間を楽しみながら努力することができるか?どうか?が試されているのだと言う。

もう、上昇志向はとかはいらない。登れなくたっていい。

ただ、ただ目の前のことを精一杯やることが幸せだろう。

もし、それができたのなら、長い人生の下り坂がどれだけ続こうと、何も恐れることはない。

素敵な方々との出会いから生まれたピアノ道。

ぜひ、手に取ってみて。

            ★★★    

しっかし、文章が面白い!一橋大学から朝日新聞入社~論説委員、編集委員などを歴任され修羅場を搔い潜ってきたからだろうと推測した。

文章に一切の含みがなく実にさっぱりと場面を描き切っている。

他人(プロ)の文章であっても、必要以上の情報をくみ取らなくていいのはありがたい。

あれも、これもと詰め込んだ文章は、いわゆる駄文だと思って近づかないようにしてるの(笑)

というわけで、素敵な老後を考える書籍の紹介をしてみたよ。

わたしも稲垣えみ子女氏に続け!とばかりに、ピアノ道を再開させた。

それでは、また!