【ブログ新規追加450回】
一気に読んでしまった。
これまでの村上作品と比べて、遥かにモノゴトについての説明や登場人物についての情報が多く、わたしが思う「読者を置き去りにしない」秀逸な作品と言える。
小説を読むうえで、わたしが必要としているのは、伝えたいことについての説明や情報が詳細でなくとも、ある程度提供されているのを重要視している。
これまで数えきれないほど小説を読んできたから、内容が薄く書き手の勉強不足を補うリカバリーな文章表現にはもう騙されなくなった。
村上氏のこれでもか!という「ミルフィーユのように積み重なった膨大な勉強量」と「納得の行くまでゴリゴリと手直しされたであろう推敲のこん跡」が垣間見えるエンターテインメント性の高い芳醇な作品だ。
ああ、村上春樹氏ってどこまでも読者思いだったんだと改めて気が付いた(驚き!)
で、もったいないので、小説のレビューはよそう。できることなら読んでみてほしい。
簡単なあらすじだけ書き示しておく。
『騎士団長殺し』村上春樹・著
これは、36歳の男性画家(肖像画専門の画家)の話だ。結婚6年目にある日突然妻から「あなたとはもう一緒にやってはいけないから」とだけ言われた。
その日の内に画家は車で東北方面へあてもなく放浪の旅に出ていく。
2ヵ月ほど北の街を放浪したが、もう飽きてしまい画家仲間の友だちにいきさつを電話した。
友だちの提案により、友だちの父親(有名画家)が所有する小田原の別荘で暮らすことになる。
そこから、奇妙な事件やら問題に引きずり込まれていく。
キーワードは別荘の屋根裏に隠すように置いてあった、「騎士団長殺し」という名前のついた大型の絵画だった。それは有名画家が「ある問題」を明らかにするために描いた絵画らしい。
主人公画家は、このピカソ作ゲルニカを思わせる絵画の持つ秘密を暴くつもりはなかったが、どんどん不思議とも言える人物や現象に巻き込まれていく。
例えば、いわくつきの中年男性の依頼を受け肖像画を書く案件とか、なぜだか夜中に鈴の音が規則正しく鳴り響くとか、怪しい石室の存在など毎日がサスペンス極まりない状況を冷静に分析する主人公画家。
謎だらけの話がさらに謎を生む。
そんなある日、イデアが突然顕れる。
イデアとは、プラトンが生んだ哲学だ。
「見る」という動詞(idein) に由来する。元々は「見られている」ことを前提とした「姿」「形」を表す言葉である。
作品中、時おり主人公の前に姿を顕す身長60㎝のイデアは、まさに「騎士団長」の出で立ちをしていた。
イデアが顕れるようになってからは、不思議な現象にも説明がつき、いつしか現実でも非現実でもモノゴトは進んでいくし、まったく怖いものではなくなっていった。
しかもイデアは予言ができる。
この予言に従う主人公画家の行く末は・・・。
★
「第2部 還ろうメタファー編」では、主人公画家とイデアが遭遇する新たな局面(解決すべき問題)をどうやって乗り越えるのかが超楽しみだ。
第1部、第2部で1000ページにも及ぶ超大作。それを一気に読ませる村上氏の筆力には脱帽する。
※8月18日夕方の月
騎士団長の放つ名言に「目に見えるものが現実だ」「しっかりと目を開けて見ておればいいのだ」「判断はあとですればよい」と。
村上氏には珍しい、モノゴトの収束をさせる場面も多数あり、この作品は第3部が続編で出されるだろうと、多くのハルキストの話題となった記憶がある。
そうね。第3部が出たらぜひ、読みたい。
どうか、村上氏、煙に巻かないで・・・(笑)
※ 騎士団長のモチーフは、モーツアルト作オペラ「ドン・ジョバンニ」の名場面「地獄落ち」からだそうだ。
まず、タイトルありきの作品となった。
「面影の 現わる時期か 酔芙蓉」 清流子
夏の日の思い出作りもそろそろ締めに入る、残暑厳しい日々が始まりました。夏の始めは真っ白いイメージだったものも、ピンクに染まり頬を染めるような記憶として残るかも。コロナ禍のなか良い思い出がほしいところだね。
雨ばかりで残暑も無いなあ( ´艸`)