【ブログ新規追加635回】
一昨日、フライングで早々と猫をとあるSNSにアップした。
で、今日はここにも(笑)
普通の猫じゃないとダメよね。で、「吾輩は猫である」を取り上げようか?と思ったが、なんと!昨日がかの「夏目漱石の日」だった。
気づいたのは、今よ今(笑)
せっかく、多くの書籍を紹介するブログを運営中なんだから、夏目漱石の名作を一書取り上げてみよう。
『明暗』角川文庫
• あらすじ
新婚の男には忘れられない女がいた。
津田は勤め先の社長夫人の紹介で、お延という女とあっさり結婚した。平凡な毎日を送る津田とお延。津田はお延と知り合う前に将来を約束した女性がいた。清子という。
しかし、清子はある日突然、津田を捨てて昔からの幼馴染の男と結婚してしまう。数年が経った後、清子が温泉場に一人で滞在していることを知るのだ。
未練がましく、しょうもない男の性を引きずるように、津田は密かに清子の元へと向かってしまう。
★
大正5年、漱石の死を以って連載終了した未完の名作だ。
人間のエゴイズム神髄に迫った長編大作小説。
読者は、その内容の濃密さとエゴイズムの行く末を読み進めずにはいられないだろう。
ちょっとだけ、本文を引用してみよう。
• 本文より
「貴方は何故清子さんと結婚なさらなかったんです」
問は不意に来た。津田は俄かに息塞(いきづま)った。黙っている彼を見た上で夫人は言葉を改めた。
「じゃ質問を易(か)えましょう。――清子さんは何故貴方と結婚なさらなかったんです」
今度は津田が響(ひびき)の声に応ずる如くに答えた。
「何故だか些(ちっ)とも解らないんです。ただ不思議なんです。いくら考えても何にも出て来ないんです」
「突然関さんへ行っちまったのね」
「ええ、突然。本当を云うと、突然なんてものは疾(とっく)の昔に通り越していましたね。あっと云って後を向いたら、もう結婚していたんです」(本書461ページから引用)
★
なんかね。この部分だけでも、「後先なんてどーでも良くってさ。最後は清子に行き着くまでさ」とでもいいそうな、「わかんない性(さが)」丸出しの津田。
そこに悪気はない。さしづめ、突然津田を捨てた清子も同じように「わかんない性(さが)を持つ」者のよう。
夏目漱石は「どーでもいい話」を最高に面白く書くエンターテインメントなんだ。
だって、『明暗』なんか、平凡な夫婦の話と、昔付き合っていた男女の話でしょ?
それを、危うい気持ちを書くことで心理戦に持ち込んで、ちゃんと濡れ場では絡み合う・・・ということだけを、つらつらとずう~~~~っと描かれる長編大作なのだもの。
どう?昔のロングバケーションを読んでみたいと思わない?あっ!思わないか(笑)
だって、どこにでもある男と女の話だもんで。
ただ、笑っちゃうというか凄いなあ~と、思うのが作家夏目漱石の最後の作品だってことだ。
本物のエンターテインメントだったってわけ。
~2月21日「夏目漱石の日」によせて~
「末黒野や 命の充電 再生す」 清流子
”生物はなぜ死ぬのか”という本が注目されている。DNAには進化プログラムとして死が組み込まれているというのだ。転じて野焼きで黒い野は末黒野 (スグロノ)、焼け跡から新芽吹く生命の輪廻が想われる。